ひろしま美術館

オディロン・ルドン1840~1916

  1840年、フランス南西部の都市ボルドーで生まれたオディロン・ルドンは、兄を偏愛していた母親によって生まれてすぐにペイルルバードの伯父のもとへ里子に出され、幼少期を孤独に過ごした。荒涼とした風景が広がるその場所で、母に捨てられたという現実から目をそらしながら、彼は現実にはない夢の世界に住むようになる。
 15歳の時、水彩画家、スタニスラス・ゴランに自由に描くことを教えられたルドンは、18歳で、フランス画壇を牛耳っていたジャン=レオン・ジェロームに学ぶ。しかし、そのアカデミズムになじむことができず、すぐに故郷に戻った。  故郷で、ルドンは二人の人物から決定的な影響を受けている。植物学者のアルマン・クラヴォーから、自然の神秘や東西の文学・哲学について啓発され、次いで放浪の銅版画家ロドルフ・ブレダンの感化のもとに、幻想的なエッチングや素描の制作を始めるようになる。
 1879年、石版画集《夢の中で》を発表し、世に知られるようになる。このとき彼はすでに39歳で、発表した作品は油彩画ではなく、版画という白黒の世界であった。ルドンは「黒」を「最も本質的な色」と呼び、独特の「黒の世界」の中で、奔放な空想と独自の造形のかたちを掘りさげていった。
ルドンは印象派の画家たちと同じ世代であり、彼らの色彩表現に惹かれていたが、あえて白黒の版画を利用し、想像力を磨いていった。印象派の感覚的であるだけの世界に不満を持ち、想像力や精神的なものを見直し、独自のイメージを創り上げようとしたのである。
 結婚の年(1880年)、ルドンは初めてパステルの作品を描いた。そして、50代も後半にさしかかる頃、芸術の原点ともいえるペイルルバートの土地と館が経済的理由で売却され、これを転機に、それまでの呪縛から解き放たれたかのように、版画や素描によるモノクロの世界から、パステルや油彩を用いた鮮やかな色彩の世界へと移る。色彩に満ち溢れたルドンの絵画は世間にも認められるようになり、画家としての幸福を手に入れた。晩年は、花や少女を聖霊のように描きながら、パリで76年の生涯を閉じた。

オディロン・ルドン《ペガサス、岩上の馬》

オディロン・ルドン
《ペガサス、岩上の馬》

1907-10年頃 パステル,カルトン 80.7×65.0cm

Odilon REDON
Pégase, cheval sur le rocher
pastel, carton

印象派とほぼ同じ頃、想像力の世界にのみ関心抱く一群の画家が登場した。象徴主義と呼ばれる彼らの代表格がルドンである。ルドンは晩年パステルという素材を通して、輝くような色彩を手中にする。ペガサスはギリシャ神話のアンドロメダ救出や怪獣キマイラ退治で活躍する有翼の神馬。

オディロン・ルドン《青い花瓶の花》
 

オディロン・ルドン
《青い花瓶の花》

1912-14年頃 パステル,カルトン 78.0×53.8cm

Odilon REDON
Les Fleurs dans un vase bleu
pastel, carton

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