ひろしま美術館

ジャコモ・マンズー1908~1991

 アルトゥロ・マルティーニ、マリノ・マリーニとともに現代イタリアの3大巨匠と称される彫刻家。古典彫刻、なかでも人間への限りない礼讃を表明したローマ的世界に強い影響を受け、単純で直接的な表現力による魂のもっとも深い情感を表す独自の作風を確立した。
 靴職人の貧しい家庭の第12子としてベルガモに生まれる。11歳のとき木彫師のもとで働きはじめ、メッキ職人、石膏職人など徒弟働きを転々とするが、1927年ヴェローナのサン・ゼーノ・マッジョーレ教会を飾るロマネスクの青銅扉の浮彫りを見て深く感動、彫刻家の道をめざす。以後、大理石から木材、石膏、陶土、彫金、浮彫りと、すべて独学で習得した。一度パリに出るが、貧困生活に苦しみ、1930年ミラノに落ち着いて本格的な制作活動をはじめる。
 マンズーは、生涯を通じていくつかのテーマをシリーズ化して繰り返し制作している。「枢機卿」「踊り子」「妻インゲ像」「恋人たち」「子供」などであるが、それらを、塑像はもちろん、浮彫りやデッサン、版画などで表現する。なかでもキリスト教的テーマは特徴的で、1934年サン・ピエトロ寺院で見た光景に感銘を受けて始めた《枢機卿》シリーズ、1941年に発表した「キリストの磔刑」を主題にした浮彫りシリーズ、1952年に制作依頼を受け12年もの歳月をかけて完成させたサン・ピエトロ寺院門扉の浮彫り《死の扉》などはその代表作である。しかし、マンズーはここで自らの信仰を表現したのではない。キリストや枢機卿などの形態を通して、厳しい時代に生きる人間の苦悩や悲痛の叫びなどを表現したのであった。もうひとつの特徴的なテーマである女性や子供を扱うときも同じである。動きを抑制した明快な形態のなかに、自信と苦悩をあわせ持つ女性の美しさと子供たちの無垢な明るさなどを表現する。彼の彫刻には、個人的な情感とともに普遍的な人間の本質が刻みこまれているのであった。
 その他、ザルツブルク大聖堂の《愛の扉》(1955・58年)、ロッテルダム聖ローレンス教会の《平和と戦争の扉》(1966-68年)などの大作を残したほか、世界各地で個展、回顧展を開催するなど20世紀後半を代表する彫刻家として活躍し、ローマ近郊のアルーディアで没。83歳。

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ジャコモ・マンズー
《ダンスのステップ》

1958年 ブロンズ  69.0×20.0×10.0cm

Giacomo MANZÙ
Passo di danza
bronze

 

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