ひろしま美術館

アンリ・ル・シダネル1862~1939

 抒情性の漂う作風から、象徴主義の文脈で語られるフランスの画家。しかし、象徴主義運動に積極的にかかわっていたというわけではなく、むしろ世紀末の雰囲気の中で活動した象徴主義世代の画家といえる。
 父親の仕事の関係でインド洋に浮かぶモーリシャス島に生まれる。10歳の頃家族とともに帰国、ブルターニュで過ごした後、パリに出る。最初、パリのエコール・デ・ボザールでアレクサンドル・カバネルのアトリエに学ぶが、むしろマネや印象派の画家たちに惹かれてアカデミックな訓練を放棄する。しかし、当初はサロンを中心に出品し、1891年には同展で3等賞を受賞、イタリアへの奨学金を手にしている。1890年代に入ると、詩人で前衛的な美術評論家のカミーユ・クレールと知り合い、サロン・ナショナルのほうへ出品しはじめ、ここでアマン=ジャンやナビ派の画家たちとも親交を結ぶようになる。以後、時代の空気を吸収して象徴主義的傾向の作品を描くが、文学などに画題を求めたのではなく、抒情性のともなった詩的な世界に人物などを描き出した。
 1901年、モネのジヴェルニーに倣ってオワーズ県のジェルブロワに家を手に入れ、以後この地を中心に制作を続ける。この頃には、身近なモティーフ、家や庭などを明るく淡い色使いで描くようになる。また、徐々に名声も高まり、レジオン・ドヌール勲章を受章、美術アカデミー総裁にまで選出されており、さらに国内だけでなく、ベルギーやアメリカなど外国からもしばしば招かれて展覧会等に参加した。パリで没、晩年もうひとつの拠点としていたヴェルサイユに埋葬される。77歳。

アンリ・ル・シダネル《離れ屋》
 

アンリ・ル・シダネル
《離れ屋》

1927年 油彩,カンヴァス 150.0×125.0cm

Henri LE SIDANER
Le Pavillon
oil, canvas

1901年、古い要塞都市ジェルブロワを訪れたル・シダネルは、この町に魅せられて、まもなく屋敷と土地を手に入れる。そしてモネにならってその庭を整備し、生涯情熱を持ってその庭を描き続けた。ここでは、夏の宵、月光に照らされた一面の蔓薔薇が、その芳香が香るかのように巧みに表現されている。

アンリ・ル・シダネル《帰りくる羊の群れ》
 

アンリ・ル・シダネル
《帰りくる羊の群れ》

1889年 油彩,カンヴァス 91.0×150.5cm

Henri LE SIDANER
La Rentrée du troupeau, Étaples
oil, canvas
INADA COLLECTION

アンリ・ル・シダネル《胸像、ジェルブロワ》
 

アンリ・ル・シダネル
《胸像、ジェルブロワ》

1902年 油彩,カンヴァス 73.0×92.0cm

Henri LE SIDANER
Le Buste, Gerberoy
oil, canvas

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