ひろしま美術館

ウジェーヌ・ドラクロワ1798~1863

 ロマン主義を代表する画家。ルーベンスに影響を受けたとされる豊麗な色彩表現は、印象派の色彩を予告するもので、その先駆的な役割を果たす。
 外交官シャルル・ドラクロワの息子としてパリに生まれる。本当の父親は政治家タレイランとも考えられている。それもあってか、無名の新人ながら重要な公共建築の装飾を次々に委嘱され、作品も政府買上になるなど生涯生活に苦労することはなかった。一方で、美術界では厳しい批判にさらされ続けた。ただし、人生そのものはいたって静かで、生涯独身を通し、ほとんど弟子もとっていない。ほとばしる情念はカンヴァスの世界に限定されていた。
 1820年代、《ダンテの小舟》《キオス島の虐殺》(ともにルーヴル美術館)をサロンに出品して、文学趣味に悲劇性を加味した主題を大胆で自由に表現する独自の様式を確立。同時にダヴィッドの後継者と目されていたアングルとの対決が、サロンを舞台にはじまる。さらに、1831年サロンに発表した《民衆を導く自由の女神》(ルーヴル美術館)で、新しい前衛芸術ロマン主義の中心的担い手としての立場を鮮明にする。1832年、政府使節団の随行員としてモロッコを旅行、多くのスケッチを残した。後に多くの優れた作品がこのスケッチから生まれる。色彩はさらに明るく大胆になった。
 ルネサンス以来の人文主義的伝統を受け継ぐ最後の巨匠と称されるように、その文学的素養から、聖書や神話を含むあらゆる文学作品に着想した作品を多く描く。同時に、同時代の事件に取材したもの、さらに静物画、風景画、動物画と、そのテーマはきわめて広い。常に画壇から非難を受けながらもサロンを中心に活躍するが、自らの情念のすべてを絵画に捧げるその姿勢からも、近代最初の偉大な画家であった。パリで没。56歳。

ウジェーヌ・ドラクロワ《剣を持つ兵士》
 

ウジェーヌ・ドラクロワ
《剣を持つ兵士》

水彩,紙  19.1×13.1cm

Eugène DELACROIX
Soldat à l'épée
watercolor, paper

ウジェーヌ・ドラクロワ《墓場のアラブ人》
 

ウジェーヌ・ドラクロワ
《墓地のアラブ人》

1838年  油彩,カンヴァス  47.3×56.0cm

Eugène DELACROIX
L'Arabe au tombeau
oil, canvas

ドラクロワは、1831年の暮れからモロッコへのフランス政府使節団に記録画家として随行した。半年に及ぶこの旅は、その後のドラクロワの重要なイメージ源となる。本作もそのひとつで、墓の傍に座るのはフランス使節団の護衛隊長を務めたモロッコ王の近衛兵ベン=アブーである。

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