ひろしま美術館

ピエール・クリスタン1935~

 現代フランスを代表する具象系画家。ボーナルやヴュイヤール以来のアンティミストの系譜に属し、なかでもパリの人々が集まるカフェやレストラン、酒場、さらには競馬場やサーカスなどを温かな視線で描き続けている。 スイス国境に近いフランスのエヴィアンに生まれる。アルプスの麓の町で、現在ではミネラルウオーターで有名である。市役所の公務員をする父親のもと安定した穏やかな家庭に育ち、若い頃から画家を目指して、ローザンヌ(スイス)の美術学校に入学する。1957年、クリスタン22歳の頃である。すでに第二次世界大戦の暗い影は薄れ、新たな美術の息吹が芽生えはじめた時期であった。この頃のパリは、20世紀後半の主流であった抽象表現主義やポップ・アート、アンフォルメルの嵐が吹き荒れる一方で、具象絵画にも一定の広がりをもっており、ビュッフェなどのヒーローを生み出していたのである。そうしたなか、クリスタンは、一時ブルターニュ地方の中心都市レンヌの美術学校で学んだ後、このパリにアトリエを構えて本格的な画家としての活動をはじめる。サロン・ドートンヌやアンデパンダン展に出品する一方で、毎年のように個展を開いた。当初からそのデッサン力には定評があり、徐々に人気と実力をつけて、フランスを代表する具象系画家の地位を確立していく。 クリスタンは、パリの街に出て常に絵を描いた。人の集まるところならどこにでも出かけていったという。ただし、その場で油絵を描くのではなく、スケッチブックを片手にデッサンして回った。一時難聴を患っていたため、決して口数が多いわけではなかったが、スケッチすることでその場に馴染み、周りを決して緊張させることなく日常を切り取ることができたようである。これらのスケッチをもとに、アトリエに戻って油彩画に仕上げていった。それゆえ、クリスタンの描く人々の姿には、その場に溶け込んだ同じ人間としての温かさと穏やかさが漂っている。一方で、確かなデッサン力を背景にした、色彩に負けていない造形性もその魅力のひとつである。

No Photo
 

ピエール・クリスタン
《ギリシャ・レストラン》

油彩,カンヴァス  97.5×146.0cm

Pierre CHRISTIN
Restaurant grecque
oil, canvas

No Photo
 

ピエール・クリスタン
《風景》

油彩,カンヴァス  46.5×55.2cm

Pierre CHRISTIN
Paysage
oil, canvas

  • 印刷
  • 作家一覧へ
ページの先頭へ