ひろしま美術館

ポール・セザンヌ1839~1906

 ポスト印象主義の一人に数えられるフランスの画家。印象主義を独自の方向に乗り越え、「見る」ことを捉え直すことで新しい造形世界を創出した。ゴッホ、ゴーギャンらの感情や意味を込める芸術世界とは異なる、造形による新たなその絵画は、キュビスムをはじめとする20世紀美術に多大な影響を与え、ひとつの大きな流れを形づくる。
 南フランスの古都エクス=アン=プロヴァンスの裕福な家庭に生まれたセザンヌは、中学時代の旧友エミール・ゾラに影響されてパリに出て画家を志す。まもなくアカデミー・シュイスに通いはじめ、ここでピサロと出会い、マネを囲む前衛芸術家たちの集まりにも参加している。この集まりのなかから実現する印象派展にも、ピサロに誘われるまま第1回・第3回と2度出品をしている。しかし、もともとその雰囲気にはなじむことができなかったようであり、当初こそピサロの自然を謙虚に観察する画風に影響を受けているが、次第に印象主義の理論に違和感を感じて独自の画風を求めていった。印象主義の結果、画面から失われた堅固な構成と確固とした形態を、獲得した色彩はそのままで、取り戻そうとしたのである。「印象主義を美術館の絵のように、堅牢で永続的なものにしたい」、セザンヌの口癖であった。80年代以降は作品をほとんど公表することなく、故郷のエクスに戻って制作に専念する。ここで、「サン=ヴィクトワール山」の連作や《水浴図》を生み出すのであった。
 やがて、セザンヌの活動は先進的な人たちのあいだで知られるようになり、多くの画家や評論家がエクスを訪れ、自身孤独な世捨て人のような暮しをしていたが実際は多くの信奉者と名声に包まれて、この地で没した。67歳。翌1907年には、パリのサロン・ドートンヌでセザンヌの大回顧展が開かれ、パリの画壇はセザンヌ一色に包まれる程の反響をみせる。

ポール・セザンヌ《曲った木》
 

ポール・セザンヌ
《曲った木》

1888-90年 油彩,カンヴァス 46.0×55.0cm

Paul CÉZANNE
L'Arbre tordu
oil, canvas

ポール・セザンヌ《坐る農夫》
 

ポール・セザンヌ
《坐る農夫》

1897年頃 油彩,カンヴァス 55.0×46.0cm

Paul CÉZANNE
Paysan assis
oil, canvas

故郷のエクスに引きこもったセザンヌは、付近で働く農夫や庭師をモデルにした有名な《カード遊びをする人たち》の連作にとりかかるが、この農夫もその制作の過程で生まれたものと考えられる。堅牢な画面構成、ところどころの塗り残しなど、セザンヌの特徴がよく発揮された小品である。

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